トレードをしていてこんな経験はありませんか。
損は大きくなるのに、利益は小さい。
もっと具体的にいえば、含み損なかなか切れないし、利益が伸ばせずすぐに利確してしまう。
この行動は人の心理が深くかかわっています。
感情に左右されないトレードをするために勉強したい内容です。
目次
FXトレーダーが勉強すべき学問
人の思考や行動の95%は「潜在意識」つまり、無意識で動いているといわれています。
これはハーバード大学のジェラルド・ザルトマン教授が研究から明らかです。
つまり、無意識的に非合理的なことを選択しがちだといえます。
トレードにおいていえば、「なんとなく」や「感情」に身を任せた非合理的なトレードをするのが『普通』なのです。
しかしトレードにおいて重要なのは、合理的な判断をすることです。
合理的とは、つまり期待値(リスクリワード)に基づいて判断をする必要があるということです。
そのためにおすすめなのが、「行動経済学」です。
冒頭での
含み損なかなか切れないし、利益が伸ばせずすぐに利確してしまう。
こんな経験も、行動経済学の中では理論の1つとし説明がつきます。
これらの行動心理を理解し、意識することで、合理的なトレーダーを目指しましょう。
『行動経済学』の世界とは
一般的な経済学とは、「パーフェクトヒューマン」を想定して研究されている学問です。
そのため、必ずしも合理的な行動を取るとは限らない対人間では、当てはまらないことも多い「机上の空論」にもなりまねません。
そこで経済学に心理学をプラスして研究を行う学問が、『行動経済学』です。
1950年ごろから始まり、1990年代以降に急速に発展してきた歴史の浅い新しい学問です。
損は大きくなるのに、利益は小さい。
この行動も、行動経済学で説明がつくのです。
FXトレーダーに多いこの行動は、「プロスペクト理論」で説明することができます。
プロスペクト理論とは、
ダニエルカーネマン氏によって展開された理論で、不確実性下において、人間がどのような選択をするかという意思決定モデルの1つです。
出題。あならならどっち?
プロスペクト理論を解説するにあたって
まずは、自分の行動を認知するために問題を出題します。
解説は後程おこないますので、まずは2問の2択問題に対するあなたの答えを決めてくださいね!!
問1 お金が貰えると言われたらどちらを選ぶ?
- 無条件で100万円を貰える
- コイントスで、裏が出たら300万円貰える
表なら1円たりとも貰えない
問2 お金を支払わなければいと言われたら、どちらを選ぶ?
- 無条件で100万円を支払う
- コイントスして裏が出たら300円支払う
表なら1円たりとも支払わなくてよい
2択問題の答え|プロスペクト理論が発動しているのは?
1問目に①、2問目に②と答えた方。
見事にプロスペクト理論が発動しています。
こういう方は、FXトレードにおいて損は大きくなるのに、利益は小さいトレードをしがち、良く言えば人間的な人です。
逆の回答をした人は、100万程度では感情的にならないお金持ちか、期待値の高い合理的な選択が出来る人です。
プロスペクト理論とは、
『利益を得る場面においてはリスク回避を優先し、損失を受ける場面においては、できる限り損失を回避をする』
傾向があることです。
どのような心理が働いているのか解説します。
利益を得る場面のプロスペクト理論
問1の内容は利益を得る場面の行動についてです。
内容はこうです。
- 無条件で100万円を貰える
- コイントスで、裏が出たら300万円貰える。
表なら1円たりとも貰えない
プロスペクト理論が発動している人は、①の無条件で100万をもらうことを選びます。
しかし、実はこれは非合理的な回答です。
合理的に期待値計算をすると以下のようになります。
①の期待値=100万円
【期待値計算式】
100%100万円が貰えるので100万円
②の期待値=150万円
【期待値計算式】
50%の確率で300万円が貰えるので
50%×300万円=150万円
つまり、合理的に考えれば②を選ばなければいけないのです。
プロスペクト理論が発動している人は、『利益を得る場面においてはリスク回避を優先』。
ここでいうリスクとは、「利益が貰えないこと」です。
②を選んで、仮にコインの表が出たとしても、お金を取られて損失になるわけではないのに、
利益を確実に得るために「必ず貰える」①を選択してしまうのです。
期待値の高い②を選べた人は、合理的な判断を下せている人か、期待値で判断していないのであれば100万程度では感情的にならないお金持ちということになります。
損失を受ける場面のプロスペクト理論
問2の質問内容は、損失を受ける場面の行動です。
- 無条件で100万円を支払う
- コイントスして裏が出たら300円支払う
表なら1円たりとも支払わなくてよい
プロスペクト理論が発動している人は、②のコイントスして裏が出たら300万、表なら支払い無しを選びがちです。
期待値は、先ほどと変わりません。
①の期待値=100万円
【期待値計算式】
100%100万円を支払うので、100万円
②の期待値=150万円
【期待値計算式】
50%の確率で300万円を支払う
50%×300万円=150万円
つまり今度は、①の無条件に100万を支払うほうが期待値が低い合理的な判断となるのです。
プロスペクト理論が発動している人は、『損失を受ける場面においては、できる限り損失の確定を回避をする』。
(損失回避バイアス)
合理的にリスクを回避するのであれば、期待値の低い①を選択するはずなんです。
損失が確定する場面においては、支払わなくてよいチャンスを優先してしまうのです。
期待値の高い①を選べた人は、合理的な判断を下せている人か、期待値で判断していないのであれば100万程度では感情的にならないお金持ちということになります。
プロスペクト理論がFXで発動する場面
再度、プロスペクト理論について振り返ります。
『利益を得る場面においてはリスク回避を優先し、損失を受ける場面においては、できる限り損失を回避をする』
つまり、利益と損失を得る場面を繰り返すFXトレードは、プロスペクト理論の宝庫なのです。
「損は大きくなるのに、利益は小さい」に直結したプロスペクト理論が発動する行動を紹介します。
早売り
ポジションを取っている時に含み益になったら、すくに利益を確定したくなる
⇨利益を得られないリスクを避けている
塩漬け
含み損になっても損切できない
⇨損失確定を回避している
やれやれ売り
含み損だったポジションがやっと含み益になったのであわてて売却
⇨損失確定を回避している
⇨利益を得られないリスクを避けている
プロスペクト理論に惑わされないトレードのため
「損は大きくなるのに、利益は小さい」
この原因が、学問で説明がつくものだとお分かりいただけたでしょうか。
冒頭でも書いたように、トレードにおいて重要なのは、合理的な判断をすることです。
合理的とは、つまり期待値(リスクリワード)に基づいて判断をする必要があるということです。
FXトレードにおいてプロスペクト理論が発動する「早売り」「塩漬け」「やれやれ売り」というような状況は、どれも期待値を無視して、自分の今の都合のよい選択をしてしまっています。
しかし、利益を得る場面においてはリスク回避を優先し、損失を受ける場面においては、できる限り損失を回避をする生き物だと認知することができれば、
意識的に回避する選択が可能となるのです。
プロスペクト理論が発動していないか、自分に問いながら合理的なトレーダーを目指しましょう。