プロや個人投資家などの多くがテクニカル分析に利用する一目均衡表。
人気があり奥深いテクニカル指標の基本の部分を学びましょう。
1.一目均衡表とは
一目均衡表は「売り手と買い手のバランスを一目で判断する」指標として、細田悟一氏が一目仙人(イチモクサンジン)氏として世に発表された日本発祥のテクニカル指標です。
現在では海外でも「ICHIMOKU」として利用されるほどです。
しかしながら、本当の意味で一目均衡表を理解している人は少ないといわれていることも事実です。
(特に海外のツールでは、計算式が違っているものもあったりします。)
一目均衡表の原著は全7巻と中身がぎっしりで奥深いテクニカル指標です。(うち3巻は絶版)
原著が世にでたのは1969年ですが、東京新聞の商況部長としてコラムの執筆なども担当していたころ、初めて新聞に掲載したのは1935年のことだったそうです。
時間論、波動論、値幅観測論などで構成されています。
一目均衡表の書籍については、細田氏の遺族が運営する株式会社経済変動総研のHPより購入できます。
2.一目均衡表:5本の線を求める数式
一目均衡表を表示すると、ローソク足チャート上に5本の線(転換線・基準線・先行スパン1・先行スパン2・遅行線)が表示されます。
先行スパン1と先行スパン2のの間は塗りつぶされ「抵抗帯」と呼ばれます。
一目均衡表を理解するにあたって、線の求め方や描き方というのは重要なポイントです。
これらの計算の意味を考えることが一目均衡表を一目で読み解くカギとなるでしょう。
これらの線がどんな計算をもって算出され、どんな意味をもつのか、日足をもとに解説していきます。
(日足で解説をしますが、一目均衡表は分足や週足、月足など他の時間軸チャートにおいても有効です。)
一目均衡表の各線の名前 | 求め方(計算式) |
転換線 | |
基準線 | |
先行スパン1 | |
先行スパン2 | |
遅行線 |
テクニカル指標のインジケーターは、設定の数字を自分仕様に変更して使っていくものが多いですが、
一目均衡表については、上記にしめした数字であることに意味があり、むやみに変更すると意味をなさない指標です。
そのままの使用をしましょう。
(一目均衡表で使用されている数字は、時間論の「基本数値」が使用されています。)
日足ベースで解説したため、「9日間、26日間、52日間」というような表現になっています。
違う時間軸で使用する場合は、「各数字=ローソク足の本数」で解釈してください。
3.一目均衡表:各線の特徴・注目ポイント
転換線
転換線=(当日を含めた9日間の高値+安値)÷2
転換線は、当日を含む過去9日間の安値と高値の中心の値をを結んだ線です。
9日間という短期間におけるゾーンの中心である相場水準を見ることができます。
短期の相場水準変化をあらわす転換線は、トレンドの方向性を把することに活用します。
転換線が右肩上がり→短期的な上昇トレンド
転換線が右肩下がり→短期的な下降トレンド
転換線が平行(横ばい)→短期的なボックス相場(横ばい、レンジ)
さらに、転換線とローソク足の位置関係から、短期的な時間軸の売りと買いのバランスを把握することができます。
ローソク足が転換線より上ならば、短期的時間軸における力は「買い」が優勢。
ローソク足が転換線より下にあれば、短期的時間軸における力は「売り」が優勢。
ローソク足が転換線上にあれば、短期的時間軸における力は「均衡」している。
転換線の注目ポイント
- 転換線の向き
- 転換線とローソク足の位置
基準線
基準線=(当日を含めた26日間の高値+安値)÷2
当日を含む過去26日間の安値と高値の中心の値をを結んだ線です。
26日間という中期間におけるゾーンの中心である相場水準を見ることができます。
中期の相場水準変化を線である基準線は、トレンドの方向性を把することに活用します。
基準線が右肩上がり→中期的な上昇トレンド
基準線が右肩下がり→中期的な下降トレンド
基準線が平行(横ばい)→中期的なボックス相場(横ばい、レンジ)
さらに、基準線とローソク足の位置関係から、中期的な時間軸の売りと買いのバランスを把握することができます。
ローソク足が基準線より上ならば、中期的時間軸における力は「買い」が優勢。
ローソク足が基準線より下にあれば、中期的時間軸における力は「売り」が優勢。
ローソク足が基準線上にあれば、中期的時間軸における力は「均衡」している。
基準線の注目ポイント
- 基準線の向き
- 基準線とローソク足の位置
先行スパン1(上限線)
先行スパン1=(転換線+基準線)÷2
転換線と基準線の中間値を、当日を含めた26日未来にずらして描かれた線です。
先行スパン1では以下の2点に分けて考えます。
- 先行スパン1=(転換線+基準線)÷2
- 当日を含めて26日未来に描く
先行スパン1の数式:(転換線+基準線)÷2について考える
転換線=短期間の相場水準
基準線=中期間の相場水準
をあらわすことから、
先行スパン1は、短中期の値動きの把握にも利用できます。
先行スパン1「当日を含めて26日未来に描く」が持つ意味
先行スパン最大の特徴は、他のテクニカルには珍しく未来の時間軸に描かれる点です。
株価の予測に使われる線として活用されます。
「転換線と基準線の中間値」を未来軸において考えるとどんな予測に利用できるのか・・・
こちらについては後述します。
先行スパン2
先行スパン2=(当日を含めた52日間の高値+安値)÷2
※当日を含め26日未来にずらして描く
先行スパン2では以下の2点に分けて考えます。
- (当日を含めた52日間の高値+安値)÷2
- 当日を含めて26日未来に描く
先行スパン2の数式:(当日を含めた52日間の高値+安値)÷2について考える
当日を含む過去52日間の安値と高値の中心の値をを結んだ線です。
52日間という長期間におけるゾーンの中心である相場水準を見ることができます。
長期の相場水準変化を線である先行スパン2は、トレンドの方向性を把することに活用します。
先行スパン2が右肩上がり→長期的な上昇トレンド
先行スパン2が右肩下がり→長期的な下降トレンド
先行スパン2が平行(横ばい)→長期的なボックス相場(横ばい、レンジ)
さらに、先行スパン2とローソク足の位置関係から、中期的な時間軸の売りと買いのバランスを把握することができます。
ローソク足が先行スパン2より上ならば、長期的時間軸における力は「買い」が優勢。
ローソク足が先行スパン2より下にあれば、長期的時間軸における力は「売り」が優勢。
ローソク足が先行スパン2上にあれば、長期的時間軸における力は「均衡」している。
先行スパン2の注目ポイント
- 先行スパン2の向き
- 先行スパン2とローソク足の位置
※同じ縦の時間軸における株価と先行スパンを比較すると、当日を含めて26日前の中心値と比較することになるので間違えないようにしましょう。
先行スパン2「当日を含めて26日未来に描く」が持つ意味
先行スパン1と同様、未来の時間軸に描くという点が加わるのがとても大きなポイントです。
未来軸にある先行スパン2と現在の株価を利用して未来の株価の予測をすることに利用できます。
これについては後述します。
遅行線
遅行線=当日の終値
今日の終値を、当日を含む26日過去にずらして描かれているのがポイント。
当日を含め26日前とは一般的な言い方をすると、25日前となります。
一目均衡表の線において一番重要だといわれているのが遅行線です。
遅行線とローソク足の価格を比較すると、25日前にポジションをとった人が現在含み益なのか、含み損なのかが一目で判断できます。
買いポジション目線で考えると、
ローソク足が遅行線より上にある
25日前に株を購入した人は、含み益である(評価損益額が+)
ローソク足が遅行線より下にある
25日前に株を購入した人は、含み損である(評価損益額が-)
ローソク足が遅行線上にある
25日前に株を購入した人は、損益が0円の状態である(評価損益額が±0)
ということが言えます。
遅行線とローソク足は、時間経過とともに近づいたり離れたり、はたまた交わったりと位置関係が変化していきます。
遅行線とローソク足の価格差が変化するということです。
ローソク足より上にあった遅行線との価格差が縮まっていくと・・・線が交わる
ローソク足より下にあった遅行線との価格差が縮まっていくと・・・線が交わる
これらの意味することは、
ローソク足より上にあった遅行線がローソク足に交わり下抜けた場合
今まで含み益だった人が含み損になる=評価損益額が+→-に変わる
ローソク足より下にあった遅行線がローソク足と交わりうわ抜けた場合
今まで含み損だった人が含み益になる=評価損益額が-→+に変わる
ということです。
交わらずとも、近づく・離れるといった変化を見ることで、相場の変化を予測する材料として使うことが可能となります。
遅行線の注目ポイント
- 遅行線とローソク足の位置関係
- 遅行線とローソク足の距離の変化
一目均衡表の基本|まとめ
- 一目均衡表は5種類の線からなっている
- 算出方法に使用する数字にも意味がありそのまま使用するもの
- 転換線=短期間の相場水準を示し、短期間のトレンドや売り買いのバランスをみる
- 基準線=中期の相場水準を示し、中期間のトレンドや売り買いのバランスをみる
- 先行スパン1=短中期の相場水準をみることに加え、未来軸に描かれ株価の「予測」に活用できる
- 先行スパン2=長期の相場水準を示し、長期期間のトレンドや売り買いのバランスをみることに加え、未来軸に描かれ株価の「予測」に活用できる
- 遅行線=現在の株価と過去の株価を比較することで売り買いのバランスの変化をうかがう。
もっとも重要な線といわれている。