為替相場におけるニュージーランドドルの位置づけを知るために、まずニュージーランド経済の概要から順番に見ていきましょう。
目次
ニュージーランド経済の概要
ニュージーランドのGDPは2125億米ドル(2020年)で世界のGDPランキングでは50位となっており、人口も約500万人ですから国という単位としては比較的小規模な経済圏です。
ニュージーランドの経済は貿易に強く依存していて、モノとサービスの輸出がGDPの約30%を占めています。
主要な輸出は農産物で、オーストラリアとの貿易が貿易収支の20%(貿易収支内訳第一位)を占めており、オーストラリア、中国、日本の貿易量は全体の42%です。
従ってニュージーランドの経済は、輸出相手国の経済の影響を強く受けます。
特にオーストラリアや中国の経済の影響はニュージーランドドル相場に顕著に現れます。
オーストラリアは資源輸出国なので、資源価格がオーストラリア経済に影響を与えます。
オーストラリア経済はニュージーランド経済に影響を与えます。
NZドル/米ドルとWTI原油CFDの日足チャートの比較画像をご覧ください。
●ニュージーランドドル/米ドルの日足チャート(2020年1月~2022年3月)
●WTI原油CFDチャート(2020年1月~2022年3月)
この2つのチャートは完全に相関しているわけではありません。
2020円の4月頃は、新型コロナウイルスによる原油の需要の減少と産油国の協調減産協議決裂があり、どちらも落込んだ後に上昇しするという共通した動きです。
原油価格というニュージーランドとは直接関係のない要素が、オーストラリアという国を介してニュージーランドドル相場に影響を与えていることがわかります。
ニュージーランドの金融政策
ニュージーランドにはニュージーランド準備銀行(RBNZ)があります。
政策決定会合が年に8回開催され、政策金利が決定されています。
財務大臣とRBNZ総裁は、政策の安定性維持と生産・金利・為替レートの不安定性回避に重点を置いた政策協定を結んでいます。
その協定に基づいて、物価は消費者物価指数の年間上昇率を1.5%で安定させることを目標としています。
オフィシャル・キャッシュレート(OCR)と呼ばれる金利をRBNZが設定することで、個人や企業に提示される金利を操作します。
OCRを定期的に見直し・調整することてで、経済の成長と安定のバランスを取っています。
基本的にRBNZの政策金利は他国の政策金利よりも高いことが多く、外資を集めるための高金利政策がニュージーランドの金融政策の大きな特徴です。
ニュージーランドドルの特性
ニュージーランドドルの特性を
- 商品相場との連動
- キャリートレードの影響
- 金利差
- 人口推移
- 気候変動
5つの視点から見ていきます。
●商品相場との連動
ニュージーランドの輸出の40%が一次産品(コモディティー)です。
コモディティーとニュージーランドドルには相関関係があり、その中でも乳製品価格と強く連動して動いています。
つまり、乳製品価格が上がればニュージーランドドルの買い材料となり、ニュージーランドドルも上昇し、逆に乳製品価格が下がれば、ニュージーランドドルも下がります。
ニュージーランドの輸出商品の価格が上昇するということは、ニュージーランドドルが買われるだけでなく、ニュージーランドの経済全体が潤うことにも繋がり、あらゆる経済活動を高めることになります。
●キャリートレードの影響
キャリートレードとは高金利通貨を買い、低金利通貨を売る取引のことです。
ニュージーランドは高金利を維持する傾向があるため、キャリートレードの買われる側の通貨として投資家に非常に人気があります。
従ってニュージーランドドルと他国通貨の金利差が大きければ大きいほどニュージーランドドルは買われやすくなり、逆に金利差が小さくなればなるほどニュージーランドドルは売られやすくなります。
このような背景から、ニュージーランドドルは金利の変化に敏感に反応する通貨であることがわかります。
RBNZの政策金利だけではなく、主要国、特にアメリカのFRBの政策金利によっても大きく動きます。
米国の政策金利が上がればニュージーランドドルは売られやすくなり、米国の政策金利が下がれば買われやすくなります。
●金利差
先述したように、ニュージーランドドルをトレードするトレーダーは、ニュージーランドの金利と他国の金利の差に注目しています。
その金利差はニュージーランドの短期国債のプレミアが、他国に対してどのくらい差があるのか示しているため、将来の投資資金の流れを知る手掛かりになります。
金利差に着目してトレードするキャリートレードがニュージーランドドル相場を大きく動かす要因であり、ニュージーランドドル相場の特徴でもあります。
●人口推移
ニュージーランドの人口は現在約500万人と他の先進国と比べて少ないため、少ない人口の推移でも経済に大きく影響を与えます。
2013年から2014年にはニュージーランドの人口は78,000人増加し、90年間の過去最多記録となりました。
しかし、2011年から2012年は26,000人しか増えておらず、数万人単位で人口が増減することによって、分母の小さなニュージーランドの経済は大きな影響を受ける特徴があります。
出典:世界経済のネタ帳
●干ばつなどの気候変動
ニュージーランドの輸出の大半が一次産品ですから、気象の変動による農業被害によってGDPは大きく影響を受けます。
2013年にはニュージーランドでは干ばつによって13億ドルもの被害を出しました。
同じように最大輸出国のオーストラリアの干ばつによってニュージーランドの貿易は左右さるため、オーストラリアの気象変動も貿易を介してニュージーランド経済に大きな影響を及ぼします。
ニュージーランドドルが上がる要因
金融政策 | 金利差の拡大 (ニュージーランドの金利の方が他国より高くなる場合) |
要人発言 | 米ドルが売られるような発言 (リスクオン) |
景気動向 | ・貿易収支の向上 ・貿易対象国の景気上昇 ・貿易対象国の通貨の上昇 ・主要貿易対象国であるオーストラリアや中国の経済基盤を支える資源価格の上昇 |
ニュージーランドドルが下がる要因
金融政策 | 金利差の縮小 (ニュージーランドと他国の金利差が小さくなる場合) |
要人発言 | 米ドルが買われるような発言 (リスクオフ) |
景気動向 | ・貿易収支の縮小 ・貿易対象国の低下 ・貿易対象国の通貨の下落 ・主要貿易対象国であるオーストラリアや中国の経済基盤を支える資源価格の下落 |
ニュージーランドドルと豪ドルの関係性
オーストラリアはニュージーランドの最大貿易相手国です。
オーストラリアの経済が上向きなら貿易も上向き、ニュージーランドドルも上向きとなり、ニュージーランドドルとオーストラリアドルには強い相関関係があります。
NZドル/米ドルと豪ドル/米ドルの日足チャートの比較画像をご覧ください。
・NZドル/米ドル日足チャート(2020年1月~2022年3月)
・豪ドル/米ドル日足チャート(2020年1月~2022年3月)
上記2つのチャートを比べてみるとよく似たチャートの形をしています。
オーストラリアドルとニュージーランドドルには非常に強い相関関係があることがわかります。
ニュージーランドの重要経済指標
・国内総生産(GDP)
・消費者物価指数(CPI)
・国際収支報告
・インフレ調整後小売売上高
・生産者物価指数
ニュージーランドドルのまとめ
ニュージーランドドルは貿易に依存した国の通貨なため、貿易相手国であるオーストラリアドルや中国人民元の影響を受けます。
ニュージーランドは高金利通貨政策を基本としているためニュージーランドドルはキャリートレーダーに買われやすい特徴をもっています。
⇒ニュージーランドドルは主要貿易国であるオーストラリアや中国の経済の影響と、自国と他国の政策金利差によって上下する通貨であることがわかります。
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