日本の自国通貨である円(JPY)は、流動性の高い通貨として世界中で市場取引されています。
特にUSD/JPY(米ドル/円)は、EUR/USD(ユーロ/ドル)に次いで、世界第2位の通貨取引量となっています。
FXでは、USD/JPY(米ドル/円)の他に、EUR/JPY(ユーロ/円)やGBP/JPY(ポンド/円)など数多くの通貨ペアがあります。
今回は、円の世界的な位置付けや特性、為替相場が変動する要因、円と米ドルの関係について解説します。
しっかりと内容を理解し、明日からのトレードに活用しましょう。
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日本円の世界的な位置づけ
日本のGDPは、世界213カ国中で第3位に位置しており、1人当たりGDPについては第24位となっています。
(いずれにおいても2020年時点の名目GDP)。
したがって、日本は世界の中でも上位の先進国となります。
※GDP(国内総生産)とは、一定期間で生産したモノやサービスの価値を示す指標であり、数値が高いほどその国の景気、及び経済が豊かだと判断できることから、日本は経済的にかなり安定した国と言えます。
日本円の特性
上記はドル円の月足チャートです。
日本円は有事の際などで市場リスクが高まった際に円は安全資産として買われやすい動きと言われています。
2008年の「リーマンショック」
2011年の「東日本大震災」
これら2つの時期のドル円チャートを見ると有事の円買いが確認できます。
2011年の「東日本大震災」の際は、日本経済が落ち込むことが確実視されていました。
通常は円売りと考える方が妥当なのですが、実際には円買いとなっていますので、それだけ投資家の間では、有事の円買いが浸透されていると言えます。
2020年の「コロナショック」で円買いがされていることを確認できます。
ただし、2012年下旬ごろからは、キャリートレードの影響によって、円が売られ続けている現状です。
※キャリートレードとは高利回りのトレードを積極的に追及するトレードのことで、高金利通貨を買い・低金利通貨を売るということを指します。
先進国の中で金利が最も低い通貨は円なので、円は売られやすい状況です。
一方で、米ドルの金利は近年上昇傾向にあるため、それに伴い米ドル/円は上昇し続けている(ドル高/円安)背景があります。
2022年4月では、上記の理由により「ロシアのウクライナ侵攻」という歴史的な有事にも関わらず、円買いが起こっていません。
むしろ、円は継続的に売られ続けていることが確認できます。
一部の有識者の間でも円の通貨構造が変化したのではないかと囁かれている程、歴史的局面だと考えられています。
したがって、有事という理由のみで、円買いをすることはおすすめできません。
円と日本の株式市場の関係
日本の株式市場と円は一般的に反比例の関係といわれいおり、、円が売られると、株は買われやすくなることを指しています。
以下チャートでは、既に確認した2012年からの円売りに伴い、日経平均株価が上昇していることが確認できます。
理由としては、円安に伴い、特に日本の輸出企業の海外セグメントでの売り上げが好調となり、株価が上昇すると考えられているからです。
ここで注意したいことは、あくまで、円安に伴い、株価が上昇するのであって、株価が上昇することに伴い、円安となるわけではありません。
このあたりの因果関係はしっかりと押さえておきましょう。
〇 円安→株価上昇
× 株価上昇→円安
※日経平均株価(2012年~2022年)
円が上がる要因
国際情勢 | 有事の際 |
金融政策 | 日銀が発表する金利政策(利上げ)・金融緩和策の縮小 |
経済指標 | 日本における失業率、GDP、消費者物価指数、国際収支統計などの経済指標が市場予想を上回った場合 |
円が下がる要因
国際情勢 | 世界的な好景気時 |
金融政策 | 日銀が発表する金利政策(利下げ)・金融緩和策の拡大 |
経済指標 | 日本における失業率、GDP、消費者物価指数、国際収支統計などの経済指標が市場予想を下回った場合 |
円と米ドルの関係
日本の輸出、輸入相手国は中国に次いで、ともにアメリカが第二位となっています。
また、既に記載しましたが、USD/JPY(米ドル/円)は、EUR/USD(ユーロ/ドル)に次いで、世界第2位の通貨取引量となっています。
つまり、それだけ日本とアメリカの関係性は深いということが言えます。
2022年現在、1ドルあたり約120円がおおよその相場となっていますが、第二次世界大戦後から1973年までは、GHQ(連合国軍総司令部)が打ち出した物価安定・緊縮財政政策である「ドッジ・ライン」によって1ドル360円の固定相場制だった時期があります。
※固定相場制とは、文字通り、1ドルあたりの自国通貨レートを固定するものです。
メリットとして、為替相場を安定させインフレ的金融政策を抑制させることができます。
一方で、デメリットとして、先程のメリットの裏返しで、自由な金融政策を行うことができないことや、外貨準備不足のため固定相場制を維持できないと投機家に判断されると、投機攻撃を受け、固定相場制を維持できなる可能性があることです。
日本は主に輸出国であるため、円安になればなるほど、利益が膨らみやすい傾向にあります。
変動相場制へ移行後、日本の高度成長および、アメリカの国力低下(ベトナム戦争や貿易戦争が主な原因)により円高(ドル安)が急速に進みました。
結果、日本はそれまでのように、輸出で大きな利益を得ることができなくなりました。
このことがきっかけで、日本の輸出企業は、為替の影響をあまり受けない海外へ生産拠点を移すことで、より効率的な生産体制を築くようになりました。
円の特性を理解してトレードしよう!
これまで解説した通り、日本は世界の中でも先進国なので、円の取引は毎日のように行われ、諸外国との取引量も莫大なものとなっています。とりわけ、アメリカとは国際的および歴史的に深い関係があり、円と米ドルの市場取引は活発です。
また、円は有事の際に買われやすい傾向にあり、過去の「リーマンショック、」「東日本大震災」などを振り返っても、やはり円が買われていることを確認しました。
しかし、近年は、キャリートレードの考え方が主流となっているので、「ロシアのウクライナ侵攻」のような有事の際であっても、円は買われず、むしろ売られ続け、円安傾向が止まりません。ただ、裏を返せば、もしも円の利回りが今後上昇すれば、かなりの確率で円高が発生することが見込まれています。
このように、先進国通貨、かつ安全資産である円は、ボラティリティも小さいため、初心者トレーダーにオススメな通貨となります。特に、流動性が比較的高い、USD/JPY(米ドル/円)やEUR/JPY(ユーロ/円)がオススメですので、ぜひ最初に取引してみてください。
※GBP/JPY(ポンド/円)はボラティリティが大きく、その他通貨はスプレッドが広いため、初めのうちはオススメできません。
今回解説した円の特徴をしっかりと掴んで、今後のトレードに活かしましょう!