ポンドは値動きが大きく、高金利が魅力の通貨です。
通貨の取引量において、ポンドは世界第4位です。
しかし、ポンドは米ドルやユーロと比べて流通量が少ないため、投機の対象になることが多いようです。
大きく変動するポンド相場はトレーダーに人気があり、ポンドのみでトレードする達人も存在します。
大きなリスクがある反面、大きく利益を上げることも可能なためです。
今回は、ポンドの位置づけやポンドの特性、ポンドに影響を与える要因やポンドの通貨ペアについて解説します。
ポンドについてしっかりと理解し、明日からのトレードに生かしましょう。
目次
ポンド概要
ポンドは2022年現在、イギリスやイギリスを宗主国とする国々(エジプトなど)で使用されてる通貨です。
第二次大戦以降の基軸通貨は米ドルですが、それ以前はイギリスは高い経済力を誇っていたため、ポンドは基軸通貨として使用されていました。
ポンドは金本位制において最も重要な通貨でしたが、第一次大戦後から徐々にその地位が揺らぎ始めました。
ポンドの地位が低下した結果、第二次世界大戦後はアメリカのドルが基軸通貨になり、ポンドは基軸通貨としての地位をアメリカに譲りました。
1999年1月から、多くのヨーロッパの国々では 多国間で単一通貨、ユーロが使用されています。
しかし、イギリス国内では、ユーロ導入には反対意見が多かったため、ユーロ導入は見送られました。
もし、ユーロ導入が決定すれば、ポンドが使用できなくなり、イギリスの経済状況に応じた金融政策が実施できないためです。
ポンドの位置づけ
イギリスの名目GDPは世界の約3.5%を占めており、世界GDPランキングで第5位です。(2017年)
参考までに、世界第1位はアメリカ、第2位は中国、第3位は日本、第4位はドイツです。
ユーロが導入されて間もない1999年頃は、世界の名目GDPにおいてイギリスは第4位でした。
また、イギリスは、イングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランドで成り立っている連合王国です。
イギリスのGDPの内訳は、約73%がサービス部門を占めており、金融サービスが主要な産業になっています。 (2020年)
ロンドンには、世界でも最大級の金融街「シティ」があり、欧州で一番の経済規模を誇っています。
また、ロンドン、東京、ニューヨーク市場は、世界三大為替市場と呼ばれています。
金融・サービスだけでなく、医薬・製薬部門も国の重要な産業になっています。
イギリスは天然資源も豊富で、石炭・天然ガス・石油を大量に埋蔵していたため、1980年代から2005年までは原油輸出国でした。
ポンドの特性
1999年1月に、ドイツやフランスを含めヨーロッパ19ヵ国は、単一通貨、ユーロの導入を決定しました。
しかし、イギリスはユーロへの参加を見送りました。
ポンドの使用を継続することにより、イギリス独自の政治や経済の政策を実行可能なためです。
ポンドは、イングランド銀行(BOE)が通貨を発行し、政策金利を決定しています。
多国間で使用されているユーロと異なり、柔軟な金融政策を実施できる利点があります。
また、イギリスでは、2016年6月には欧州連合(EU)からの離脱を問う国民投票が行われました。
選挙の結果、予想以上にEU離脱派が残留支持派を上回ったため、大きくポンドはその日の高値から約12%下落しました。
これは、一日の下げ幅としては過去最大であり、31年ぶりの最安値となりました。
イギリスがEUを離脱することでポンドが大量に売られたため、イギリス経済が悪化するという憶測が広がりました。
また、イギリスは欧州加盟国(EU)のため、ポンドはヨーロッパの経済の影響を受けやすく、ユーロに似た動きをします。
同じヨーロッパ通貨のユーロとは、距離的・経済的・政治的に深く関わり合いがあるため、「ポンドとユーロには相関性がある」と言われています。
ポンドは、ユーロの方向性と同じになることが多いようです。
しかし、ポンドはユーロより値動きが激しい特徴があるため、ハイリスクとハイリターンの両面を併せ持つ通貨です。
ヘッジファンドなどの売買により、短期間でポンド価格が大きく変動することがあります。
ポンドに影響を与える要因とは?
通貨価格は、需要と供給の2つの関係で決定します。
需要と供給の交換比率で通貨価格が決まり、この関係が変動した時に為替相場が変動します。
また、ポンドはヨーロッパ経済の影響を大きく受ける通貨です。
ポンドを米ドルに換える需要より米ドルをポンドに変える需要が高まれば、ドル安ポンド高になります。
この需要と供給の関係が逆転すると、ドル高ポンド安になります。
また、ポンドはイングランド銀行(BOE)の金利政策や総裁の発言により大きな影響を受けます。
そのため、金利政策や総裁の発言は、市場関係者の注目が集まります。
また、その他のイギリスの経済指標の発表時にも相場が大きく動くこともあります。
イングランド銀行(BOE)の役割
BOEとはBank of Englandで、イングランド銀行を指します。
中央銀行の中では世界で2番目に古く、1694年に設立されました。
イギリスのポンドを発行している銀行です。
イギリス国内の経済活動や、物価の安定を支援しています。
イングランド銀行(BOE)には、金融政策委員会(MPC)と金融安定委員会(FPC)があります。
金融政策委員会(MPC)では、重要な政策金利を決め、量的緩和政策なども行っています。
毎回、BOEの政策金利の発表時には、市場関係者の大きな関心を集めています。
金融安定委員会(FPC)は、イギリス国内の銀行を監視し、銀行の強化と保護を目的としています。
ポンドが上がる要因
国際情勢 | テロなどの地政学的なリスクがなくなった場合 |
金融政策 | 金融の引き締め傾向の拡大 |
経済指標 | 住宅価格・英国製造業景気指数・消費者物価指数などの経済指標が予想より良かった場合 |
ポンドが下がる要因
国際情勢 | テロなどの地政学的なリスクがある場合 |
金融政策 | 金融緩和傾向の拡大 |
経済指標 | 住宅価格・英国製造業景気指数・消費者物価指数などの経済指標が予想より悪かった場合 |
ポンドの通貨ペアについて
FXでも、ポンド/米ドルやポンド/円の通貨ペアは、日本で大人気の通貨ペアです。
ポンド/米ドルは世界で第3位の取引量がありますが、1時間で大きく変動することもあるので、初心者は特に注意が必要です。
ポンド/円は、値動きが激しいため、「殺人通貨」と呼ばれています。
初心者には、デイトレードやスキャルピングよりも、スイングトレードをお勧めします。
ポンドは、東京時間の値動きはあまりありませんが、ロンドン時間以降(午後5時以降)は、激しい値動きになる特徴があります。
大きな利益を狙えますが、リスクもあります。
ストップを確実に設定してトレードに臨みましょう。
ポンドと原油の関係とは?
ポンド価格と似たような動きをするのは、原油価格です。
原油価格とポンドには、「相関性がある」と言われています。
完全に同じ動きをするわけではありませんが、同じ方向に動くことが多いようです。
イギリスには北海油田があるため、原油価格に影響を及ぼしているようです。
原油についてFXトレードする上で知っておきたい基礎知識は、別ページで解説しています。
気になる方は併せてチェックしてみてください。
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今後もポンド相場に注目していきましょう
イギリスの通貨ポンドは、第二次世界大戦後、イギリスの軍事力や経済力の衰退とともに国際社会での影響力が低下して、基軸通貨の地位を米国に譲りました。
しかしながら、現在も米ドルやユーロ、円と共に、国際通貨としてマーケットに大きな影響力を持っています。
ポンドは、マーケットが大きく変動する可能性のあるイングランド銀行(BOE)の金利政策や重要な経済指標の発表時には、大きく変動する可能性があります。
今後も、ポンドの動向に注目してトレードしましょう。
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